ひとことで言うと

  • 予測モデルには、過去のデータの動きのくせを使う時系列モデル、経済理論にもとづく構造モデル、先行指標やサーベイを使う指標型の予測、専門家の判断による予測などがあります。
  • どのモデルも、構造変化・想定外のショック・データ改定・過剰適合などによって外れることがあります。
  • 限界を理解したうえで、複数モデルの組み合わせやシナリオ分析、単純な予測(ベンチマーク)との比較で使うことが大切です。

この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「予測モデルの種類と限界」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/経済
大分類 (10) 市場の分析・予測と経済的要因
協会の学習ポイント 予測モデルの種類と手法、予測するうえでの限界について説明できる。

予測モデルの種類と限界とは

経済や市場の予測には、さまざまな手法があります。それぞれ得意な場面と弱点があるため、「どのモデルが一番正しいか」ではなく、「目的と期間に合ったモデルはどれか」「どんなときに外れやすいか」を理解しておくことが重要です。

時系列モデル

AR・ARIMAモデルやVARモデルのように、変数の過去の値から将来を予測する方法です。理論の前提が少なく、短期の予測では比較的良い成績を出しやすい一方、なぜそうなるのかという経済的な説明は弱く、政策が変わったときの効果の分析には向きません。

構造モデル

消費関数や投資関数などを組み合わせたマクロ計量モデルや、家計・企業の最適化行動から組み立てるDSGEモデルなど、経済理論にもとづくモデルです。政策シミュレーションやシナリオ分析に強みがありますが、モデルの仮定が現実と合わないと予測がずれ、作るのにも手間がかかります。

指標型・判断型の予測

景気動向指数の先行系列、イールドカーブの形状、企業や家計へのサーベイなどを使って景気の転換点を探る方法もあります。さらに、エコノミストの経験や定性情報を加味した判断による予測は、モデルが想定していない出来事に柔軟に対応できる反面、主観や行動バイアスが入りやすいという弱点があります。

予測の限界

代表的な限界は次のとおりです。①制度・技術・政策の変化による構造変化で、過去の関係が成り立たなくなる。②政策が変わると人々の行動パターンも変わるため、過去のデータで推定したモデルが使えなくなる(ルーカス批判)。③金融危機・感染症・戦争などの想定外のショック。④GDPなどのデータ改定で出発点がずれる。⑤過去のデータに合わせすぎる過剰適合で、手元のデータでは当てはまりが良くても将来の予測が悪くなる。⑥予測が公表されること自体が行動を変え、予測が自己実現したり外れたりすることもあります。

整理しておきたいポイント

種類 長所 短所・限界
時系列モデル(AR・ARIMA・VAR) 作りやすく短期予測に強い 経済的な解釈が弱い、転換点や構造変化に弱い
構造モデル(マクロ計量・DSGE) 理論的な説明ができ、政策シミュレーションに使える 仮定への依存が大きい、ルーカス批判
指標型(先行指標・サーベイ) 速報性が高く転換点の把握に役立つ だましのシグナル、指標と景気の関係の変化
判断型(専門家の予測) 定性情報や想定外の出来事を柔軟に反映 主観や行動バイアス、再現性が低い

具体例で確認

ある運用会社が、過去20年間のデータで株式リターンを10個の変数で説明するモデルを作り、手元のデータでは非常に高い当てはまりを得たとします。ところが、実際に運用に使ってみると、「前期と同じ値が続く」と考える単純な予測よりも成績が悪くなりました。

原因として考えられるのは、①たまたま過去に当てはまった変数を選んでしまった過剰適合(データマイニング)、②金融政策の枠組みの変更などによる構造変化です。対策としては、推定に使わなかった期間で成績を確かめるアウト・オブ・サンプル検証、単純なベンチマーク予測との比較、変数を理論的に意味のあるものに絞ること、複数モデルの予測を平均する予測の組み合わせなどがあります。

試験で問われやすいポイント

  • 時系列モデルと構造モデルの違いと使い分け(短期予測か、政策・シナリオ分析か)が問われやすいです。
  • ルーカス批判の内容と、それが構造モデルによる政策評価に与える意味を記述で説明できるようにしておきましょう。
  • 構造変化・外生ショック・データ改定・過剰適合など、予測が外れる理由を具体例とともに挙げさせる形に備えましょう。
  • 当てはまりの良さ(インサンプル)と予測力(アウト・オブ・サンプル)は別物、という点がひっかけになりやすいです。
  • 限界への対処として、予測の組み合わせ・シナリオ分析・ベンチマークとの比較を挙げられると記述で有利です。

要点まとめ

  • 予測モデルは時系列・構造・指標型・判断型に大別され、得意分野が違う
  • 構造変化・ルーカス批判・想定外のショック・データ改定・過剰適合が主な限界
  • 当てはまりの良さと予測力は別で、アウト・オブ・サンプル検証が欠かせない
  • 複数モデルの組み合わせやシナリオ分析で限界を補う

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。