ターミナル・バリューとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- ターミナル・バリュー(TV、継続価値)は、DCF法で予測期間より先に生まれるキャッシュフローの価値を、ある時点の価値としてまとめたものです。
- 代表的な計算は翌年のFCF ÷ (WACC − 永久成長率g)で、gは長期の経済成長率を上回らない水準に置くのが基本です。
- 企業価値の大部分を占めることが多いため、gやWACCのわずかな違いで価値が大きく変わる点に注意が必要です。
この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「ターミナル・バリューと永久成長率」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (8) 企業価値評価 |
| 協会の学習ポイント | 企業のターミナル・バリュー(継続価値)と永久成長率について理解する。 |
ターミナル・バリューとは
企業は原則として永続的に事業を続けると考えるため、DCF法ではすべての将来キャッシュフローを評価する必要があります。しかし、何十年も先まで1年ずつ予測するのは現実的ではありません。そこで、事業が安定した状態に入ると考えられる時点までを予測期間として詳しく予測し、それ以降の価値をターミナル・バリューとして1つの式でまとめて計算します。
永久成長率モデル(定率成長モデル)
予測期間後のFCFが一定の率gで永久に成長すると仮定すると、ゴードン・モデルと同じ形でTVを求められます。分子は予測期間の翌年のFCFで、求めた値は予測期間の最終年度末時点の価値です。そのため、現在価値に直すときは最終年度の年数で割り引きます。この式はWACC>gのときにだけ成り立ちます。
永久成長率の置き方
永久成長率は「永遠に続く」成長率なので、経済全体の長期的な名目成長率を上回る水準に置くと、いずれ企業が経済全体より大きくなるという不自然な結果になります。一般には、長期のインフレ率や名目GDP成長率程度か、それ以下に置くのが妥当とされます。また、予測期間の最終年度は、成長率や利益率、投資水準が安定した定常状態になっている必要があります。高成長の途中の年度を起点にすると、TVを過大に評価してしまいます。
成長には投資が必要という整合性
成長するためには投資が必要で、成長率を高く置くなら、その分だけ再投資を増やしてFCFを減らさなければ整合しません。新規投資の利益率(RONIC)がWACCと等しければ、成長しても価値は増えず、TVは成長率に関係なくなります。価値を高める成長は、RONICがWACCを上回る場合だけです。
もう1つの方法:エグジット・マルチプル法
最終年度のEBITDAなどに、類似企業のEV/EBITDA倍率を掛けてTVを求める方法もあります。実務でよく使われますが、現在の市場の倍率が将来も続くという前提を置いている点に注意が必要で、永久成長率法とのクロスチェックに使われます。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| TVn | 予測期間の最終年度(n年目)末時点のターミナル・バリュー |
| g | 永久成長率 |
| RONIC | 新規投資の資本利益率 |
| NOPAT | 税引後営業利益 |
具体例で確認
例1:成長率の違いによる感応度
翌年のFCFが60、WACCが8%のとき、TVは次のようになります。
- g=1%:60 ÷ 0.07 ≒ 857.1
- g=2%:60 ÷ 0.06 = 1,000
- g=3%:60 ÷ 0.05 = 1,200
成長率が1%変わるだけで、TVは約14〜20%も変わります。
例2:再投資を考慮したバリュー・ドライバー式
翌年のNOPATが100、WACCが8%とします。
- RONIC=12%、g=2%:100 × (1 − 2/12) ÷ 0.06 ≒ 1,388.9
- RONIC=12%、g=3%:100 × (1 − 3/12) ÷ 0.05 = 1,500(成長で価値が増える)
- RONIC=8%(=WACC)、g=2%でも3%でも:100 ÷ 0.08 = 1,250(成長しても価値は変わらない)
試験で問われやすいポイント
- 分子に翌年のFCF(FCFn×(1+g))を使う点と、TVをn年で割り引く点が計算問題のひっかけになりやすいです。
- 永久成長率を長期の名目経済成長率より高く置くべきでない理由を記述式で説明できるようにしましょう。
- WACC>gが前提であること、gがWACCに近づくとTVが急激に大きくなることを押さえましょう。
- 成長率を上げるなら再投資も増やす必要があり、RONIC=WACCなら成長は価値を生まないという整合性が問われやすいです。
- エグジット・マルチプル法との違いと、両者をクロスチェックに使う考え方も確認しておきましょう。
要点まとめ
- TVは予測期間後の価値をまとめたもので、企業価値の大部分を占めやすい
- TV=翌年のFCF÷(WACC−g)、現在価値は最終年度の年数で割り引く
- 永久成長率は長期の経済成長率以下に置き、最終年度は定常状態であること
- 成長の価値はRONICとWACCの大小で決まり、再投資との整合性が必要
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
