ひとことで言うと

  • 成長率・失業率・物価・金利・為替といったマクロ経済指標は、ばらばらではなく互いに連動しています。
  • 代表的なつながりは、成長率と失業率のオークンの法則、失業率と物価のフィリップス曲線、物価と金利のフィッシャー式、金利と政策のテイラー・ルール、金利と為替の金利平価です。
  • これらをつなげると、「景気拡大→失業率低下→物価上昇→利上げ→通貨高」のような波及の流れを分析できます。

この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「マクロ経済指標の相互関係」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/経済
大分類 (10) 市場の分析・予測と経済的要因
協会の学習ポイント マクロ経済指標の相互関係について分析ができる。

マクロ経済指標の相互関係とは

経済ニュースでは、GDP・雇用統計・消費者物価・政策金利・為替レートなどが別々に報じられますが、実際にはこれらは経済のしくみを通じて互いに結びついています。一つの指標の変化から、ほかの指標がどう動きそうかを筋道立てて考えられることが、マクロ分析や市場予測の基本になります。

成長率と失業率:オークンの法則

実質成長率が潜在成長率を上回ると、企業は人手を増やすため失業率が下がります。逆に潜在成長率を下回ると失業率は上がります。この経験的な関係をオークンの法則と呼びます。

失業率と物価:フィリップス曲線

失業率が、インフレを加速させない水準(自然失業率)より低いと、人手不足で賃金が上がり、インフレ率が期待インフレ率を上回りやすくなります。近年は、失業率が変わっても物価があまり反応しない(フィリップス曲線の平坦化)ことも議論されています。

物価と金利、金利と為替

名目金利は、おおむね実質金利と期待インフレ率の和になります(フィッシャー式)。中央銀行は、インフレ率の目標からの乖離とGDPギャップに応じて政策金利を動かす傾向があり、その目安がテイラー・ルールです。さらに、自国の金利が海外より上がると、資金が流入して自国通貨高になりやすく、金利平価の関係からは先物為替のディスカウント・プレミアムも決まります。通貨高は輸入物価を下げ、輸出を減らすことで、再び成長率や物価に影響します。

押さえておきたい公式

失業率の変化 = −β × (実質成長率 − 潜在成長率)オークンの法則(βは経験的に推定される係数)
インフレ率 = 期待インフレ率 − γ × (失業率 − 自然失業率)期待で修正されたフィリップス曲線
名目金利 ≒ 実質金利 + 期待インフレ率フィッシャー式
政策金利 = 均衡実質金利 + インフレ率 + 0.5 × (インフレ率 − 目標) + 0.5 × GDPギャップテイラー・ルール(係数0.5は代表的な設定)

具体例で確認

実質成長率3.0%、潜在成長率1.0%、オークン係数β=0.5、現在の失業率3.5%、自然失業率3.0%、フィリップス曲線の係数γ=0.6、期待インフレ率2.0%(物価目標も2.0%)、均衡実質金利0.5%、GDPギャップ+1.0%とします。

  1. 失業率の変化:−0.5 × (3.0 − 1.0) = −1.0%ポイント → 失業率は2.5%
  2. インフレ率:2.0 − 0.6 × (2.5 − 3.0) = 2.0 + 0.3 = 2.3%
  3. テイラー・ルールによる政策金利:0.5 + 2.3 + 0.5 × (2.3 − 2.0) + 0.5 × 1.0 = 3.45%

高めの成長が失業率を下げ、物価を押し上げ、利上げ圧力につながる流れが数字で確認できます。利上げは内外金利差を通じて自国通貨高の要因にもなります。

試験で問われやすいポイント

  • ある指標の変化が他の指標に与える影響の方向(成長率↑→失業率↓→インフレ率↑→金利↑→通貨高)を、筋道を立てて説明させる記述に備えましょう。
  • オークンの法則・フィリップス曲線・テイラー・ルールに数値を入れて、連鎖的に計算させる問題に注意しましょう。
  • フィリップス曲線では「期待インフレ率」と「自然失業率」が基準になる点、長期的には垂直に近づくという考え方が問われやすいです。
  • 名目と実質の区別(フィッシャー式)や、実質金利がマイナスになる状況の意味も押さえておきましょう。
  • 関係は経験則で、係数が時代や国によって変わる(フィリップス曲線の平坦化など)ことも記述の論点になります。

要点まとめ

  • マクロ経済指標は、成長→雇用→物価→金利→為替と連動している
  • オークンの法則は成長率と失業率、フィリップス曲線は失業率と物価の関係
  • フィッシャー式で名目金利と実質金利、テイラー・ルールで政策金利の目安を考える
  • 係数は経験的に推定されたもので、時期や国によって変わる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。