ゴーイング・コンサーンと企業分析の基礎的要因とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・株式分析
ひとことで言うと
- ゴーイング・コンサーン(継続企業の前提)とは、企業が予見できる将来にわたって事業を続けるという前提のことです。
- この前提に立つと、企業価値は「いま持っている資産の売却額」ではなく、将来にわたって生み出すキャッシュフローの現在価値として考えます。
- 企業分析では、マクロ経済・産業・競争力・財務・経営といった基礎的要因(ファンダメンタルズ)から、その将来の稼ぐ力を見積もります。
この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅰ「株式分析」の学習ポイントのひとつ「企業分析の基礎的要因」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅰ/株式分析 |
|---|---|
| 大分類 | (2) 株式投資と企業のファンダメンタル分析 |
| 協会の学習ポイント | 企業分析において検討すべき基礎的要因、ゴーイング・コンサーン原則と企業価値について理解する。 |
ゴーイング・コンサーンと企業分析の基礎的要因とは
株式分析の目的は、企業の「本来の価値」を見積もり、市場の株価と比べることです。そのためには、まず「その企業がどれだけ稼ぎ続けられるか」を考える必要があります。このとき土台になるのがゴーイング・コンサーン(going concern、継続企業)という考え方です。
ゴーイング・コンサーンとは、企業が解散や清算をせず、将来も事業を続けていくという前提です。企業会計そのものもこの前提の上に成り立っており、たとえば設備を取得原価で計上して耐用年数にわたって減価償却するのは、「その設備を今後も使い続ける」ことを前提にしているからです。
企業価値は「将来の稼ぎ」で決まる
継続企業の前提に立つと、企業の価値は、いま保有している資産をばらばらに売ったときの金額ではなく、事業を続けることで将来生み出すキャッシュフローを、リスクに見合った割引率で現在価値に直した合計として考えます。これが配当割引モデル(DDM)やDCFモデル、残余利益モデルなど、この後に学ぶ価値評価モデルの共通の出発点です。
一方、事業をやめて資産を売却し、負債を返済した後に残る金額を清算価値といいます。通常の企業では継続価値のほうが大きく、だからこそ事業が続けられています。ただし、業績が大きく悪化して継続価値が清算価値を下回るような企業では、清算価値が株式価値の下支えとして意識されることがあります。
検討すべき基礎的要因
将来のキャッシュフローを見積もるには、企業を取り巻く要因を上から順に確認していくのが基本です。景気・金利・為替などのマクロ経済要因、市場の成長性や競争の激しさといった産業要因、その企業の競争優位やビジネスモデルといった企業固有の要因、さらに財務の健全性や経営者の質、ガバナンスなどです。マクロから産業、個別企業へと絞り込んでいく流れはトップダウン・アプローチと呼ばれ、逆に個別企業の分析から積み上げる方法はボトムアップ・アプローチと呼ばれます。
整理しておきたいポイント
| 比較の観点 | 継続価値(ゴーイング・コンサーン価値) | 清算価値 |
|---|---|---|
| 前提 | 事業を将来も続ける | 事業をやめて資産を売却する |
| 価値の源泉 | 将来のキャッシュフロー(稼ぐ力) | 現在保有する資産の処分価額 |
| 主な評価方法 | DDM・DCF・残余利益モデルなど | 資産の売却見込額から負債を差し引く |
| 重視される場面 | 通常の企業の価値評価 | 経営不振企業や解散が視野に入る場面 |
具体例で確認
ある企業が、今後も毎年100億円のフリー・キャッシュフローを永続的に生み出すと見込まれ、投資家が求める割引率が8%だとします。毎年一定額が永続する場合の現在価値は「キャッシュフロー ÷ 割引率」で求められるので、継続価値は次のとおりです。
一方、この企業が今日事業をやめ、工場や土地を売却して負債を返済した後に残る金額が800億円だとすると、清算価値は800億円です。継続価値(1,250億円)が清算価値(800億円)を上回っているため、事業を続けるほうが価値が大きいと判断できます。もし将来のキャッシュフロー見通しが大きく悪化して継続価値が800億円を下回るなら、事業を続けるよりも清算したほうが株主にとって有利になる、という見方になります。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「企業価値評価と株式価値評価の違い、ゴーイング・コンサーンと企業価値」)。
試験で問われやすいポイント
- ゴーイング・コンサーンの意味(企業が将来も事業を継続するという前提)が問われやすいです。
- 継続企業の前提では、企業価値を将来キャッシュフローの現在価値で考える点が狙われやすいです。
- 継続価値と清算価値の違い、とくにどちらを前提に評価するかの正誤問題で混同しやすいので注意しましょう。
- 取得原価主義や減価償却など、会計処理が継続企業の前提に立っていることとの関係も問われやすい論点です。
- マクロ→産業→企業と絞り込むトップダウンと、個別企業から積み上げるボトムアップを逆に入れ替えたひっかけに注意しましょう。
要点まとめ
- ゴーイング・コンサーン=企業が将来も事業を続けるという前提
- この前提では、企業価値は将来キャッシュフローの現在価値で決まる
- 清算価値は事業をやめて資産を売却した場合の価値で、経営不振時に意識されやすい
- 将来の稼ぐ力は、マクロ・産業・企業固有の基礎的要因から見積もる
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
