ひとことで言うと

  • 個人の資産は金融資本と人的資本から成り、人的資本(将来の稼ぐ力)は死亡や就業不能で失われるおそれがあるため、保険で守るという発想が必要です。
  • 生命保険は早く亡くなるリスク(死亡リスク)に、終身年金は長生きして資金が尽きるリスク(長生きリスク)に備えるもので、両者は逆方向のリスクをカバーします。
  • 資産運用と保険は別々に考えるのではなく、家計全体のリスク管理として組み合わせて考えることが大切です。

この記事では、証券アナリスト1次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「資産運用と保険の関係」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (5) 個人投資家の資産運用
協会の学習ポイント 個人投資家における資産運用と保険の関係性を理解する。

資産運用と保険の関係とは

資産運用は、リスクを取ってリターンを得る活動です。これに対して保険は、保険料を支払うことで、発生すると家計に大きな打撃を与えるリスクを保険会社に移転するしくみです。個人投資家にとって両者は対立するものではなく、取るべきリスクは運用で取り、取るべきでないリスクは保険で移転するという役割分担の関係にあります。

人的資本と生命保険

若い働き手にとって、最大の資産は人的資本です。しかし人的資本は、本人が亡くなったり、働けなくなったりすると一瞬で失われてしまいます。家族を養っている人であれば、その損失は遺族の生活を直撃します。生命保険(死亡保障)は、この人的資本の喪失をカバーするものと考えられます。そのため、人的資本が大きく、扶養家族がいる人ほど死亡保障の必要性が高く、年齢とともに人的資本が減れば、必要な保障額も小さくなっていくのが一般的です。

長生きリスクと終身年金

一方、老後は「長生きしすぎて資金が尽きる」ことがリスクになります。終身年金は、生きている限り給付が続くため、長生きリスクを保険会社(や公的年金制度)に移転する手段になります。多くの人の寿命のばらつきをプールすることで、個人では抱えきれないリスクを分け合うしくみです。

保険が必要かどうかの考え方

保険にはコスト(保険料のうち事務費用などの付加部分)がかかるため、何でも保険で備えればよいわけではありません。発生確率は低いが損失が大きく、家計で負担しきれないリスクは保険で備え、損失が小さく自分の資産でまかなえるリスクは自家保険(貯蓄で備える)とするのが合理的です。十分な金融資産を持つ人は、保険への依存度を下げられます。

整理しておきたいポイント

項目 生命保険(死亡保障) 終身年金
備えるリスク 早く亡くなるリスク(死亡リスク) 長生きして資金が尽きるリスク
守る対象 人的資本、遺族の生活資金 老後の生活資金
必要性が高い人 人的資本が大きく扶養家族がいる現役世代 老後が長く、他の収入源が少ない退職世代

具体例で確認

35歳で配偶者と子どもがいる会社員が、自分に万一のことがあった場合に必要な保障額を考えるとします。

  1. 遺族が今後必要とする生活費・教育費などの合計(現在価値):6,000万円
  2. 公的年金の遺族給付などで見込める金額:2,000万円
  3. すでにある金融資産:1,000万円
  4. 不足額(必要保障額):6,000 − 2,000 − 1,000 = 3,000万円

この3,000万円を死亡保障で備えるのが一つの考え方です。金融資産が増え、子どもが独立して必要な資金が減るにつれて、必要保障額は小さくなります。一方、退職が近づけば、今度は長生きリスクへの備えとして年金の活用を考えるようになります。

試験で問われやすいポイント

  • 生命保険は人的資本の喪失(死亡リスク)終身年金は長生きリスクへの備えであり、両者が逆方向のリスクをカバーすることが問われやすいです。
  • 人的資本が大きく扶養家族がいる人ほど死亡保障の必要性が高いという方向を押さえましょう。
  • 年齢とともに人的資本が減り金融資産が増えると、必要保障額は小さくなるのが一般的です。
  • 資産運用はリスクを取る活動、保険はリスクを移転する手段という役割の違いに注意しましょう。
  • 損失が小さく自分でまかなえるリスクは自家保険で対応するのが合理的、という考え方もひっかけになりやすいです。

要点まとめ

  • 保険はリスクを移転するしくみで、資産運用と役割分担の関係にある
  • 生命保険は人的資本(死亡リスク)、終身年金は長生きリスクへの備え
  • 必要保障額は人的資本・扶養家族・金融資産の状況によって変わる
  • 家計で負担しきれない大きなリスクを保険で備え、小さなリスクは自家保険で対応する

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。