【証券アナリスト1次】デリバティブ分析とは?要するに何を学ぶのかを学習ポイントに沿って解説
証券アナリスト(CMA)1次試験の科目Ⅰで学ぶ「デリバティブ分析」。先物、オプション、スワップ、無裁定条件、二項モデル……と抽象的な言葉が多く、「結局この分野で何ができるようになればいいの?」と感じる方も多いはずです。
この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、デリバティブ分析で要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。
デリバティブ分析で学ぶこと
- デリバティブのしくみ:先物・先渡・オプション・スワップとは何か、どこで・どうやって取引されるのか
- デリバティブの「適正な値段」の出し方:「タダで確実に儲かる取引(裁定)はできない」という無裁定の考え方で、先物価格やオプション価格を計算する
- デリバティブの使い方:ヘッジ、カバード・コールやプロテクティブ・プットなどの戦略で、損益の形をどう変えられるかを知る
デリバティブ分析の基本情報
| 試験科目 | 1次 科目Ⅰ「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」 |
|---|---|
| 試験での出題 | 第4問「デリバティブ分析」(30点)(2025年春・2024年秋の本試験の構成) |
| 学習ポイント数 | 39項目(大分類5つ) |
| 2次とのつながり | 2次では「クレジット・デリバティブ」が加わり、オプションの評価、金利・通貨デリバティブ、デリバティブを用いた投資戦略もより応用的に学びます |
全体像:5つの大分類
| 大分類 | ひとことで言うと |
|---|---|
| (1) デリバティブの種類と機能 | デリバティブとは何か、どんな種類があり、どこで取引されているのかを知る |
| (2) 先物・先渡取引の仕組みと評価 | 「将来の売買をいま約束する」取引の仕組みと、その理論価格の決まり方を学ぶ |
| (3) オプション取引の仕組みと評価 | 「買う権利・売る権利」の損益と、オプション価格の計算方法を学ぶ |
| (4) 金利・通貨を対象としたデリバティブ | 債券先物・金利先物・FRA・スワップなど、金利や通貨を対象にした商品を学ぶ |
| (6) デリバティブを用いた投資戦略 | ヘッジやオプションの組合せで、ポートフォリオの損益の形をどう変えるかを学ぶ |
各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。
※大分類の番号は協会の学習ポイントの通し番号です。(5)クレジット・デリバティブは2次で学ぶ範囲のため、1次には含まれていません。
(1) デリバティブの種類と機能
ポイント:デリバティブの「地図」を手に入れるところです。デリバティブの定義と役割、上場と店頭の違い、先物・オプション・スワップなどの基本形、そして価格を決める土台となる裁定取引の考え方と、日本の代表的な上場商品を押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| デリバティブの定義と意義 | 株式・債券・金利・為替などの原資産から価値が派生する金融商品であること。リスクのヘッジや移転に役立つという意義 |
| 上場と店頭の違い | 取引所で売買される標準化された上場デリバティブと、相対で条件を自由に決める店頭(OTC)デリバティブの特徴 |
| 主要なデリバティブの概要 | 先渡・先物、コールとプットのオプション、スワップ、クレジット・デリバティブが、それぞれ何を約束する取引なのか |
| 裁定取引と価格形成 | 割高なものを売って割安なものを買う裁定取引が働くことで、デリバティブの価格が理論値に近づくという考え方 |
| プライシングとバリュエーション | 契約時点で適正な価格(先渡価格など)を決めるのがプライシング、契約後にその契約の価値を測るのがバリュエーション |
| 株価指数先物 | 日経平均株価やTOPIXなどの株価指数を対象にした先物取引の基本的な仕組み |
| 国債先物 | 架空の「標準物」を対象にした国債先物の仕組みと、受渡しに使える国債の考え方 |
| 株価指数オプション | 株価指数を対象に、決められた価格で買う・売る権利を売買するオプション取引の基本 |
| 国債先物オプション | 国債先物を原資産とするオプション取引の基本的な仕組み |
| デリバティブ市場の概要 | 国内外のデリバティブ市場の全体像と、取引所取引・店頭取引それぞれの位置づけ |
| その他のデリバティブ | 金利・通貨を対象にしたデリバティブや、原油・金などの商品(コモディティ)先物の概要 |
(2) 先物・先渡取引の仕組みと評価
ポイント:「将来の売買の値段をいま決めておく」取引の理論です。先物と先渡の違いを押さえたうえで、「現物を買って持っておく」のと「先渡で買う」のが同じ結果になるように先渡価格が決まる(無裁定条件)という考え方で、理論価格を計算します。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 先渡と先物の違い | 取引所で標準化され、毎日値洗いと証拠金のやり取りがある先物と、相対で決済が満期にまとめて行われる先渡の違い |
| 無裁定条件による価格決定 | 先渡価格 ≒ 現物価格×(1+金利)のように、現物を借入で買って持つコストから理論価格が決まる仕組み |
| 価値・市場価格と裁定取引 | 契約時の価値はゼロでも、その後の相場変動で価値が生まれること。市場価格が理論価格からずれたときの裁定取引 |
| 保有の便益・費用と先渡価格 | 配当や利息など保有で得られる便益は先渡価格を下げ、保管費用などのコストは先渡価格を上げるという関係 |
| 商品先物とコンビニエンス・イールド | 現物を手元に持つ便利さ(コンビニエンス・イールド)が商品先物価格に与える影響と、先物価格が現物より高いコンタンゴなどの状態 |
(3) オプション取引の仕組みと評価
ポイント:デリバティブ分析の山場です。コールとプットの損益の形を押さえ、オプション価格が「本源的価値+時間価値」でできていること、プット・コール・パリティや二項モデルでオプションの価格を計算する方法を学びます。計算問題が多く出るところです。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| オプションの仕組みと種類 | 決められた価格(権利行使価格)で買う権利がコール、売る権利がプット。買い手はプレミアムを払って権利を得る |
| 満期時の価値(損益) | コールの満期価値はmax(株価−行使価格, 0)、プットはmax(行使価格−株価, 0)。買い・売りそれぞれの損益図を描けるようにする |
| 本源的価値と時間価値 | いま権利行使したときの価値(本源的価値)と、満期までに有利になる可能性の価値(時間価値)に分けて考える |
| 価格の上限・下限と決定要因 | オプション価格がとりうる範囲と、原資産価格・行使価格・ボラティリティ・満期までの期間・金利などが価格にどう効くか |
| プット・コール・パリティ | 同じ行使価格・満期のヨーロピアン・オプションで成り立つ「コール+行使価格の現在価値=プット+原資産価格」という関係 |
| 2期間二項モデル | 株価が上がるか下がるかの2通りを2期間くり返すモデルで、リスク中立確率を求め、満期から逆算してオプション価格を計算する |
| アメリカンとヨーロピアン | いつでも権利行使できるアメリカン型は、満期にしか行使できないヨーロピアン型以上の価値を持つこと。早期行使が有利になる場合の考え方 |
| オプションの裁定取引 | プット・コール・パリティなどの関係が崩れたとき、どう組み合わせれば裁定利益を得られるか、その金額の計算 |
(4) 金利・通貨を対象としたデリバティブ
ポイント:金利や為替のリスクを管理するためのデリバティブです。債券先物・金利先物・FRAで将来の金利を固定する仕組み、金利オプションの評価、そして固定と変動・異なる通貨を交換するスワップの使い方を学びます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 債券先物の仕組みと価格形成 | 受渡しに使える国債のうち最も割安なもの(最割安銘柄)と交換比率をもとに、債券先物の理論価格が決まる仕組み |
| 金利先物の仕組みと価格形成 | 短期金利を対象にした先物の仕組みと、「100−金利」の形で価格が表示されるなどの特徴 |
| 金利先渡契約(FRA) | 将来の一定期間に適用する金利をいま決めておく契約。実際の金利との差額を受け払いし、借入コストの固定などに使う |
| 二項モデルによる金利オプション評価 | 金利が上下する2期間の二項ツリーを使って、金利オプションの価値を満期から逆算して求める方法 |
| 金利スワップ | 同じ通貨で固定金利と変動金利の支払いを交換する取引。変動金利の借入を実質的に固定金利に変えるなどの使い方 |
| 通貨スワップ | 異なる通貨の元本と金利を交換する取引。外貨で調達した資金を実質的に円建てに変えるなどの使い方 |
(6) デリバティブを用いた投資戦略
ポイント:デリバティブを「どう使うか」の実践編です。先物でのヘッジ、デリバティブによる現物の複製、そしてオプションを組み合わせた代表的な戦略の損益の形を学び、目的に合った戦略を選べるようにします。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 先物によるヘッジ | 株式ポートフォリオを持ちながら株価指数先物を売って値下がりに備えるなど、ヘッジの方法と必要な枚数の考え方 |
| デリバティブによる現物の複製 | 安全資産+先物の買いで株式を持つのと同じ効果を作るなど、デリバティブで現物資産の損益を再現する方法 |
| カバード・コール | 株を持ちながらコールを売る戦略。プレミアム収入が得られる代わりに、値上がり益に上限がつく |
| プロテクティブ・プット | 株を持ちながらプットを買う戦略。プレミアムを払う代わりに、値下がりしたときの損失に下限がつく(保険の役割) |
| ブル・スプレッドとベア・スプレッド | 行使価格の異なるオプションを買いと売りで組み合わせ、値上がり(ブル)または値下がり(ベア)を限られた損益幅で狙う戦略 |
| ストラドル・ストラングル・バタフライ | 値動きの大きさに賭ける戦略。コールとプットを同時に買うストラドル・ストラングルは大きく動けば利益、バタフライは動かなければ利益 |
| カレンダー・スプレッド | 満期の異なるオプションや先物を買いと売りで組み合わせ、期間による価格差の変化をねらう取引 |
| 目的に合った戦略の選択 | 相場の見通しやリスクへの考え方(ヘッジしたいのか、収益を上乗せしたいのか)に応じて適切な戦略を選ぶ |
| 裁定取引(アービトラージ)戦略 | 先物の市場価格が理論価格からずれたときに現物と先物を反対に売買するなど、理論価格とのずれから利益を得る戦略 |
デリバティブ分析を学ぶときのコツ
1. 「無裁定」という1つの考え方でつなげる
先渡価格の計算、プット・コール・パリティ、二項モデルは、どれも「同じ結果になる2つの取引は同じ値段になるはず(そうでなければ裁定で儲かってしまう)」という考え方の上に立っています。公式を別々に覚えるのではなく、何と何が同じ結果になるのかを確かめながら整理すると、理解がぐっと楽になります。
2. 損益図を自分の手で描く
(3)(6)のオプションや戦略は、満期時の損益図を描けるかどうかが勝負です。横軸に原資産価格、縦軸に損益をとり、コール・プットの買い・売りを1本ずつ描いてから組み合わせると、カバード・コールやストラドルの形が自然に見えてきます。
3. 計算はテキストの例題を自分の手で解く
先物の理論価格、プット・コール・パリティ、二項モデル、ヘッジに必要な枚数などは計算問題の中心です。テキストの例題・練習問題を電卓で実際に解き、式の意味を確かめながら進めましょう。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。
よくある質問
Q. デリバティブ分析はどこから勉強すればいいですか?
大分類(1)でデリバティブの種類と裁定取引の考え方をつかんだら、(2)の先物・先渡、(3)のオプションと順に進むのがおすすめです。先物で無裁定の考え方に慣れておくと、オプションの価格計算の意味が理解しやすくなります。
Q. 計算問題はどのあたりから出ますか?
主に(2)(3)と(6)です。先渡・先物の理論価格、オプションの満期時損益、プット・コール・パリティ、2期間二項モデル、先物によるヘッジなどの計算を、テキストの例題でしっかり練習しておきましょう。
Q. 大分類の番号が(4)から(6)に飛んでいるのはなぜですか?
協会の学習ポイントは1次と2次で通し番号になっており、(5)クレジット・デリバティブは2次で学ぶ範囲だからです。1次では(1)〜(4)と(6)の5つを学びます。
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」にもとづき、証券アナリストアカデミーが要約しています。
