証券アナリスト(CMA)1次試験の科目Ⅰで学ぶ「債券分析」。利回り、スポットレート、デュレーション、コンベクシティ……と聞き慣れない言葉が続き、「結局この分野で何ができるようになればいいの?」と感じる方も多いはずです。

この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、債券分析で要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。

債券分析で学ぶこと

  • 債券と債券市場のしくみ:債券とはどんな商品で、どこで・どうやって発行・売買されるのか
  • 債券の値段と金利の関係:利回り・スポットレート・フォワードレートを使って債券価格を計算し、金利が動くと価格がどれだけ動くか(デュレーション・コンベクシティ)を測る
  • 信用リスクと運用戦略:社債の信用リスクや格付、証券化商品、債券ポートフォリオの運用の考え方をつかむ

債券分析の基本情報

試験科目 1次 科目Ⅰ「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」
試験での出題 第3問「債券分析」(30点)(2025年春・2024年秋の本試験の構成)
学習ポイント数 42項目(大分類7つ)
2次とのつながり 2次では「金利変動モデルに基づく債券価格評価」「オプション内蔵型債券の仕組みと評価」などが加わり、社債・証券化商品・債券ポートフォリオ戦略もより応用的に学びます

全体像:7つの大分類

大分類 ひとことで言うと
(1) 債券の種類・特性と債券市場の仕組み 債券とはどんな商品で、どこで・誰が・どうやって発行・売買しているのかを知る
(2) 金利と債券価格評価 将来のキャッシュフローを割り引いて、債券の値段を計算する
(3) 金利の理論、期間構造とスプレッド 期間ごとの金利の並び(利回り曲線)がどう決まり、どう読み解くかを学ぶ
(4) 債券のリターンと金利リスクの分析 金利が動くと債券価格がどれだけ動くかを、デュレーションとコンベクシティで測る
(7) 社債投資と信用リスクの分析 発行体がお金を返せなくなるリスク(信用リスク)を、スプレッドや格付で評価する
(8) 証券化商品の仕組みと評価 ローンなどの資産をまとめて証券にする「証券化」の仕組みを知る
(9) 債券ポートフォリオによる投資戦略 複数の債券を組み合わせて運用するときの戦略とリスク管理を学ぶ

各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。

※大分類の番号は協会の学習ポイントの通し番号です。(5)(6)は2次で学ぶ範囲のため、1次には含まれていません。

(1) 債券の種類・特性と債券市場の仕組み

ポイント:債券投資の「土台」です。債券の基本的な性質、割引債と利付債のキャッシュフロー、国内外の債券市場の仕組みと参加者、レポ取引などの周辺市場まで、債券の世界の全体像を押さえます。

学習ポイント 学ぶ内容
債券の基本と収益・リスク 債券は発行体にお金を貸して利息と元本を受け取る証券。株式との違いや、金利変動・信用・流動性などのリスクをつかむ
割引債の仕組み 利息がなく、額面より安く買って満期に額面で返ってくる債券。例:1年後に100円返る債券を95円で買えば利回りは約5.3%
固定利付債の仕組み 毎期決まったクーポン(利息)と満期の額面を受け取る債券のキャッシュフローと、最終利回りの考え方
債券の種別と分類 国債・地方債・社債・外国債など、発行体・利払い方法・通貨などによる債券の分類
債券市場指数 債券市場全体の値動きを表す指数(債券インデックス)の概要と、運用の目安としての使われ方
日本の債券発行市場 国債は財務省の入札、社債は証券会社による引受など、債券が発行されて投資家に渡るまでの流れ
日本の債券流通市場 債券の売買は取引所よりも、証券会社などとの店頭(相対)取引が中心であるという特徴
債券市場の機関と機能 日本銀行・証券会社・清算機関・振替機関など、発行・売買・決済を支える機関の役割
グローバル債券市場 米国債など海外の主要な債券市場の基礎知識と、外国債券投資での為替リスクなどの視点
レポ取引など補完市場 債券を担保にお金を貸し借りするレポ取引など、債券市場の取引を支える周辺市場の仕組み

(2) 金利と債券価格評価

ポイント:債券分析の計算の基本です。「債券価格=将来受け取るクーポンと元本を割り引いた現在価値の合計」という考え方で、利回り・スポットレート・フォワードレートを使って債券の値段を計算します。

学習ポイント 学ぶ内容
割引率による債券価格の算出 クーポンと元本を市場の割引率で現在価値に直して足し合わせると債券価格になる、という基本の計算
債券のリターン源泉 債券の収益は、クーポン収入と価格変動(償還差損益・売却損益)から生まれること
価格・クーポン・期間・利回りの関係 利回りが上がると価格は下がる。クーポンが利回りより低ければ額面割れになるなど、4つの関係を整理する
スポットレートによる価格算出 期間ごとに異なる割引率(スポットレート)で各キャッシュフローを割り引いて債券価格を求める方法
スポットとフォワードの関係 「2年間預ける」と「1年預けて、その後1年預ける」が等しくなるように決まるフォワードレートと、債券価格とのつながり
経過利息と利含み価格 前回の利払日から経過した分の利息(経過利息)を買い手が売り手に支払う仕組みと、その計算
金利裁定と債券価格評価 同じキャッシュフローを生む債券(の組合せ)は同じ価格になるはず――裁定の考え方で債券価格の割高・割安を判断する

(3) 金利の理論、期間構造とスプレッド

ポイント:期間(年限)ごとに金利がどう並ぶか=「金利の期間構造(利回り曲線)」を学びます。利回り曲線の描き方、市場データからスポットレートを取り出す方法、利回り曲線の形を説明する理論、スワップレートの使い方が中心です。

学習ポイント 学ぶ内容
利回り曲線とその関係性 最終利回り・スポットレート・フォワードレートでそれぞれ描く利回り曲線と、3つの曲線の位置関係
ブートストラップ法 短い年限の債券から順番に、利付債の価格からスポットレートを1つずつ求めていく方法
伝統的な期間構造理論 純粋期待仮説・流動性プレミアム仮説・市場分断仮説が、右上がり・右下がりなど利回り曲線の形をどう説明するか
スワップレート・カーブ 金利スワップの固定金利を年限ごとに並べた曲線と、債券評価などの基準金利としての使い方

(4) 債券のリターンと金利リスクの分析

ポイント:債券分析の山場です。「金利が1%動いたら債券価格は何%動くか」をデュレーションとコンベクシティで測り、さらに将来の金利シナリオに応じて投資期間中のリターン(所有期間利回り)がどう変わるかを分析します。計算問題が多く出るところです。

学習ポイント 学ぶ内容
金利リスクを左右する要因 残存期間が長いほど、クーポンが低いほど、利回り水準が低いほど、金利変化に対して価格が大きく動くこと
マコーレー/修正デュレーション キャッシュフローを受け取るまでの平均的な期間(マコーレー)と、利回り変化に対する価格の変化率(修正)の計算と意味
実効デュレーション 金利を上下に少し動かしたときの価格変化から求めるデュレーション。金利でキャッシュフローが変わる債券にも使える
コンベクシティ 価格と利回りの関係が直線ではなく曲線であること(凸性)を表す指標と、その計算方法
デュレーション・コンベクシティと価格変化 価格変化率 ≒ −修正デュレーション×利回り変化+1/2×コンベクシティ×(利回り変化)²で近似する
ポートフォリオの価額変化 複数の債券を持つとき、ポートフォリオ全体のデュレーションから金利変化による価額の変化を見積もる
金利シナリオと所有期間利回り 金利が上がると売却価格は下がるがクーポンの再投資収益は増える――シナリオごとに実際のリターンを計算する
投資期間・所有期間利回り・デュレーション 投資期間をデュレーションに合わせると、価格変動と再投資収益の影響がおおむね打ち消し合うという関係

(7) 社債投資と信用リスクの分析

ポイント:国債と違って、社債には「発行体がお金を返せなくなるかもしれない」という信用リスクがあります。そのリスクが利回りの上乗せ(信用スプレッド)としてどう表れるか、格付や財務指標でどう評価するかを学びます。

学習ポイント 学ぶ内容
社債の種類と信用スプレッド 社債の種類と、信用リスクの分だけ国債より高くなる利回り差(信用スプレッド)の意味
スプレッド・流動性と価格 信用力の低下や売買のしにくさ(流動性の低さ)が利回りを押し上げ、価格を押し下げる仕組み
スプレッドの変動要因 発行体の業績、景気、市場の需給など、利回りスプレッドの水準や動きに影響する要因
信用リスク量の計測 デフォルト確率・デフォルト時の損失率(回収率)・エクスポージャーから、予想される損失を見積もる基本の考え方
社債の弁済順位 担保付社債・一般社債・劣後債など返済の優先順位と、財務上の特約などで実質的な順位が変わりうること
信用格付の仕組み 会社全体の信用力を表す発行体格付と、個別の社債ごとの銘柄格付の違い、格付の便利さと限界
財務指標によるクレジット分析 自己資本比率や利払い能力(インタレスト・カバレッジ)などの財務指標から、発行体の返済能力を分析する

(8) 証券化商品の仕組みと評価

ポイント:住宅ローンなどの資産(債権)を束ねて、そこから生まれるキャッシュフローを裏付けに証券を発行する「証券化」の仕組みを学びます。誰が関わり、どんなメリットがあるのかが中心です。

学習ポイント 学ぶ内容
証券化の仕組みと利点 資産を元の保有者から切り離して証券にする仕組みと、資金調達手段の多様化などのメリット
スキームと関係機関・法制 オリジネーター(元の保有者)・SPV(特別目的事業体)・サービサーなどの役割と、倒産隔離などを支える関連法制
証券化商品の概要と市場 住宅ローン担保証券(RMBS)などの代表的な証券化商品と、その市場の概要

(9) 債券ポートフォリオによる投資戦略

ポイント:個別の債券ではなく、債券の「組合せ」で運用する視点です。利回り曲線の動き方がポートフォリオに与える影響、運用手法の種類、デュレーションを使ったリスク管理を学びます。

学習ポイント 学ぶ内容
利回り曲線の変化と価額 利回り曲線の平行移動や、傾きの変化(スティープ化・フラット化)がポートフォリオの価額にどう効くか
債券の役割と投資手法 ポートフォリオでの債券の役割と、インデックスに連動させるパッシブ運用・上回りを狙うアクティブ運用などの目的と特徴
デュレーションによるリスク管理 ポートフォリオのデュレーションで金利リスクを管理する方法と、平行移動以外の金利変化はとらえきれないなどの注意点

債券分析を学ぶときのコツ

1. 「キャッシュフローを割り引く」を軸にする

債券価格・利回り・スポットレート・デュレーションは、どれも「将来受け取るクーポンと元本を、いまの価値に割り引く」という同じ計算の上に立っています。まずは割引債と固定利付債のキャッシュフローを図に描き、何をどの金利で割り引いているのかを確かめる習慣をつけましょう。

2. 「金利が上がると価格が下がる」を体で覚える

(2)〜(4)は、価格と利回りが逆に動くという関係がすべての出発点です。「期間が長いほど」「クーポンが低いほど」価格が大きく動く理由を、具体的な数字で計算して確かめておくと、デュレーションやコンベクシティの意味がすっと入ってきます。

3. 計算はテキストの例題を自分の手で解く

利回り、スポットレート・フォワードレート、デュレーション、所有期間利回りは計算問題の中心です。テキストの例題・練習問題を電卓で実際に解き、式の意味を確かめながら進めましょう。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。

よくある質問

Q. 債券分析はどこから勉強すればいいですか?

大分類(1)で債券と市場のしくみをつかんだら、(2)の債券価格の計算に進むのがおすすめです。価格と利回りの関係を理解してから(3)の利回り曲線、(4)のデュレーションに進むと、計算の意味が理解しやすくなります。

Q. 計算問題はどのあたりから出ますか?

主に(2)〜(4)です。最終利回り、スポットレートとフォワードレート、経過利息、デュレーションとコンベクシティ、所有期間利回りなどの計算を、テキストの例題でしっかり練習しておきましょう。

Q. 大分類の番号が(4)から(7)に飛んでいるのはなぜですか?

協会の学習ポイントは1次と2次で通し番号になっており、(5)金利変動モデルに基づく債券価格評価と(6)オプション内蔵型債券の仕組みと評価は2次で学ぶ範囲だからです。1次では(1)〜(4)と(7)〜(9)の7つを学びます。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」にもとづき、証券アナリストアカデミーが要約しています。