証券アナリスト(CMA)2次試験で問われる「株式分析」。1次で配当割引モデルやPER・PBRを学んだものの、2次のテキストを開くとFCFF、スマートベータ、インプリメンテーション・ショートフォールなど新しい言葉が次々に出てきて、「2次では結局何ができるようになればいいの?」と戸惑う方も多いはずです。

この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、2次の株式分析で要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。

2次の株式分析で学ぶこと

  • 価値評価モデルを使いこなす:DDM・FCFF/FCFE・残余利益モデルを実務の場面に応用し、株価が割高か割安かを判断する
  • リターンとリスクを測って運用戦略を立てる:リスクプレミアムやベータを推定し、パッシブ・アクティブ・ファクター投資など株式ポートフォリオの戦略を選ぶ
  • 上手に売買する:注文方法やアルゴリズム取引、取引コストの測り方、最良執行の考え方を身につける

株式分析の基本情報

試験科目 2次「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」(株式分析・債券分析・デリバティブ分析・ポートフォリオ・マネジメント)
試験での出題 午前・午後の総合試験の中で出題(記述式)
学習ポイント数 39項目(大分類3つ)
1次とのつながり 1次では(1)資本市場の仕組みと株式投資、(2)企業のファンダメンタル分析、(3)株式価値評価モデルの基礎を学びます。2次はその続きとして(4)から始まり、価値評価モデルの応用、株式ポートフォリオの運用戦略、トレーディングと最良執行へと広がります

全体像:3つの大分類

大分類 ひとことで言うと
(4) 株式価値評価モデルの活用 1次で学んだDDM・DCF・残余利益モデルを、成長率の推計やFCFFの予測まで含めて実践的に使いこなす
(5) 株式リターンの分析と株式ポートフォリオによる投資戦略 リスクプレミアムやベータを推定し、パッシブ・アクティブ・ファクター投資などの株式運用戦略を理解する
(6) ポートフォリオにおけるトレーディングと最良執行 運用の最後の工程である「売買」を、コストを抑えて上手に行う方法と、その評価の仕方を学ぶ

各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。

参考:1次も含めた大分類の全体像

協会の「主要学習事項と学習ポイント」では、1次と2次で大分類に同じ通し番号を使っています。2次の株式分析に(1)〜(3)が出てこないのは、これらを1次で学ぶためです。2次は1次の内容を前提に出題されるので、全体の流れを参考に確認しておきましょう。

大分類 扱う試験 ひとことで言うと
(1) 資本市場の仕組みと株式投資 1次のみ 株式とはどんなもので、どこで・誰が・どうやって売買しているのかを知る
(2) 株式投資と企業のファンダメンタル分析 1次のみ 景気・産業・企業の競争力から、企業の稼ぐ力を分析する視点を身につける
(3) 株式価値評価モデルの基礎 1次のみ 株の「本来の価値」を計算し、市場の株価が割高か割安かを判断する
(4) 株式価値評価モデルの活用 2次のみ 1次で学んだDDM・DCF・残余利益モデルを、成長率の推計やFCFFの予測まで含めて実践的に使いこなす
(5) 株式リターンの分析と株式ポートフォリオによる投資戦略 2次のみ リスクプレミアムやベータを推定し、パッシブ・アクティブ・ファクター投資などの株式運用戦略を理解する
(6) ポートフォリオにおけるトレーディングと最良執行 2次のみ 運用の最後の工程である「売買」を、コストを抑えて上手に行う方法と、その評価の仕方を学ぶ

1次で学ぶ内容は【証券アナリスト1次】株式分析の記事で学習ポイントごとに解説しています。

(4) 株式価値評価モデルの活用

ポイント:1次で学んだ価値評価モデルの「応用編」です。株価から要求収益率を逆算する、ターミナル・バリューを置く、デュポン分解で成長率を推計する、FCFFとFCFEを使い分けるなど、実際の企業に当てはめて株価を評価する力を養います。計算問題が多く出るところです。

学習ポイント 学ぶ内容
DDMから要求収益率を出す 定率成長モデルを逆に解き、「配当利回り+成長率」で市場が株に求めているリターンを求める
ターミナル・バリュー ある時点以降の価値をまとめて1つの値(継続価値)として計算し、多段階DDMに組み込む方法
サステイナブル成長率と財務指標 サステイナブル成長率=ROE×内部留保率なので、利益率や配当性向などの財務指標が成長率を左右することを理解する
デュポン分解で成長率を推計 ROEを売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジに分け、どの要素が成長率を生んでいるかを見ながら推計する
DDMによる割高・割安判断 DDMで求めた理論株価と市場株価、または要求収益率と期待リターンを比べて投資判断をする
FCFFとFCFEの意義と算出 企業全体に帰属するFCFFと株主に帰属するFCFEの違いと、利益や設備投資・運転資本からの計算方法
FCFF・FCFEと利益・資本政策、予測 借入れや返済などの資本政策でFCFEがどう変わるか、将来のFCFF・FCFEをどう予測するか
DCF法とDDMの関係 配当もキャッシュフローの1つであり、DCF法とDDMは「将来のお金を割り引く」という同じ考え方に立つこと
適切なDCF法の選び方 FCFFをWACCで割り引いて負債を差し引くか、FCFEを株主資本コストで割り引くかなど、状況に合った手法を選ぶ
残余利益のインプライド成長率 いまの株価と簿価・資本コストから逆算して、市場が織り込んでいる残余利益の成長率を求める
残余利益モデルの前提 簿価の変化が利益と配当だけで説明できる(クリーン・サープラス関係)など、モデルが成り立つ前提条件
残余利益モデルでの割高・割安判断 残余利益モデルで求めた株式価値と市場株価を比べ、割高か割安かを判断する

(5) 株式リターンの分析と株式ポートフォリオによる投資戦略

ポイント:「どのくらいのリターンを求めるべきか」を測り、「どんな方針で株式を運用するか」を決める部分です。リスクプレミアムやベータの推定から、パッシブ運用・アクティブ運用・ファクター投資・ロング・ショート戦略、マネジャーの選び方まで、株式運用の全体像を学びます。

学習ポイント 学ぶ内容
所有期間リターン・要求収益率・IRR 実際に得たリターン、投資家が求めるリターン、割引率、株価から逆算した内部収益率の違いを整理する
株式リスクプレミアムの推定 株式が安全資産を上回って得るべき上乗せ分を、過去データから測る方法とモデルから推計する方法で求める
CAPM・マルチファクターでの推定 CAPMならベータ×市場リスクプレミアム、マルチファクター・モデルなら複数のファクターから個別株のリスクプレミアムを出す
ベータの推計 上場株は株価データの回帰で、非公開株は類似上場企業のベータを財務レバレッジで調整して推計する
割引率の選び方 FCFFならWACC、FCFEや配当なら株主資本コストのように、キャッシュフローの種類に合った割引率を使う
投資政策・市場の効率性と運用戦略 市場が効率的なほどパッシブ運用が合理的になるなど、投資家の方針や市場の特性から運用戦略を選ぶ考え方
パッシブ運用とアクティブ運用 指数に連動させるパッシブ運用と、指数を上回ることを目指すアクティブ運用の意義と特徴
株価指数とパッシブファンドの構築 時価総額加重やファンダメンタル・インデックスなど指数の特徴と、完全法・層化抽出法・最適化法などで指数に連動させる方法
アクティブ運用の意思決定プロセス 情報収集・銘柄評価・ポートフォリオ構築・見直しと、アクティブ運用が進む流れ
ファクター投資・スマートベータ バリュー・サイズ・モメンタムなどのファクターに着目した投資や、ルールに基づいて指数を組み替えるスマートベータ戦略
投資スタイルとスタイル分析 バリュー/グロース、大型/小型といったスタイルの分類と、ファンドのスタイルをリターンや保有銘柄から分析する方法
アクティブ運用の基本法則 情報比率はおおむね「予測の上手さ(IC)×独立した判断の回数の平方根」で決まるという考え方と、付加価値の測り方
エンハンスト・インデックスなど エンハンスト・インデックス、ロング・ショート、マーケット・ニュートラル、ポータブル・アルファの仕組みとリスクの特徴
ESGを取り入れた株式運用 社会的責任投資をはじめ、ESG要因を銘柄選択やポートフォリオ構築に組み込む戦略
マネジャーの選択とスタイル管理 運用会社(マネジャー)の選び方、全体のアクティブ・リターンの把握、複数マネジャーのスタイルの偏りの管理

(6) ポートフォリオにおけるトレーディングと最良執行

ポイント:どれだけ良い銘柄を選んでも、売買のコストが大きければリターンは目減りします。市場の構造や注文方法、アルゴリズム取引、取引コストの測り方(IS法・VWAP法・スプレッド)、そして顧客のために最良の条件で執行する「最良執行」を学びます。

学習ポイント 学ぶ内容
市場構造の違いと評価 オークション型やディーラー型など市場の仕組みの違いと、流動性・透明性などで市場の質を評価する視点
成行注文と指値注文 成行は約定しやすいが価格が不確実、指値は価格を守れるが約定しないリスクがある――というトレードオフ
トレーダーの類型 情報をもとに急いで売買する人、コストを重視して待てる人など、取引動機や時間・価格の優先度によるタイプ分け
トレーディング手法の選択 代表的な売買手法のコストや特徴を比べ、注文の性質に合った最適な手法を選ぶ
HFTとアルゴリズム取引 コンピュータで自動的に注文を出す手法の概要と、日々の出来高やビッド・アスク・スプレッドを踏まえた使い分け
アルゴ・HFTの価格形成への影響 アルゴリズム取引やHFTが、流動性の供給や価格変動の大きさなど市場価格の形成にどう影響するか
執行コストの構成と流動性指標 手数料・税金などの明示的コストと、マーケット・インパクトや機会費用などの潜在的コストの区別、流動性の測り方
IS法による取引コスト分析 売買を決めた時点の価格で完全に執行できた場合の仮想ポートフォリオと、実際の結果との差でコストを測る方法
VWAP法による取引コスト分析 その日の出来高加重平均価格(VWAP)と実際の約定価格を比べてコストを評価する方法と、その限界
気配スプレッドと実効スプレッド 売り気配と買い気配の差(気配スプレッド)と、実際の約定価格と仲値の差から測る実効スプレッドの違い
潜在的取引コストの推計 目に見えにくいマーケット・インパクトなどのコストを、事前・事後に推計する方法
最良執行とその体制 顧客にとって最も有利な条件で売買を執行する責任の意味と、それを実現するための社内の方針・体制づくり

株式分析を学ぶときのコツ

1. 1次の価値評価モデルを先に復習する

2次の(4)は、1次で学んだDDM・FCFE割引モデル・残余利益モデルの上に積み上がっています。定率成長モデルやサステイナブル成長率があやふやなまま進むとつまずきやすいので、まず1次の(3)を自分で式を書けるレベルまで復習しておきましょう。

2. 「なぜその手法を選ぶのか」を言葉で説明できるようにする

2次は記述式です。FCFFとFCFEのどちらを使うか、パッシブとアクティブのどちらが適切かなど、判断の理由を問われる場面が多くなります。計算結果だけでなく、その手法を選ぶ根拠を短い文章で書く練習をしておくと安心です。

3. 運用とトレーディングは流れで理解する

(5)(6)は用語が多い分野ですが、「リターンの目標を決める→運用戦略を選ぶ→銘柄を売買する→コストと成果を評価する」という運用の流れの中に位置づけると、ばらばらの知識がつながります。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。

よくある質問

Q. 2次の株式分析は1次と何が違いますか?

1次は株式市場のしくみと価値評価モデルの基礎が中心ですが、2次はそれを応用して、成長率の推計やFCFF・FCFEによる評価、株式ポートフォリオの運用戦略、トレーディングと取引コストの分析まで扱います。解答も記述式になり、手法を選んだ理由の説明が求められます。

Q. 計算問題はどのあたりから出ますか?

主に(4)の株式価値評価モデルの活用です。要求収益率の逆算、多段階DDMとターミナル・バリュー、デュポン分解による成長率の推計、FCFF・FCFEの計算、残余利益モデルなどを、テキストの例題で繰り返し練習しておきましょう。(5)のリスクプレミアムやベータ、(6)の取引コストの計算もあわせて押さえておくと安心です。

Q. 学習ポイントとは何ですか?

日本証券アナリスト協会が「CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」として公表している、学習内容の一覧です。出題範囲の公式な目安になるので、テキストを読むときはどの学習ポイントを学んでいるのかを意識しましょう。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」にもとづき、証券アナリストアカデミーが要約しています。