【証券アナリスト1次】市場と経済の分析とは?要するに何を学ぶのかを学習ポイントに沿って解説
証券アナリスト(CMA)1次試験の科目Ⅲで学ぶ「市場と経済の分析」。需要曲線や無差別曲線といったミクロ経済から、GDP・IS-LM分析・金融政策・為替といったマクロ経済まで範囲が広く、「結局この分野で何ができるようになればいいの?」と感じる方も多いはずです。
この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、市場と経済の分析で要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。
市場と経済の分析で学ぶこと
- ミクロ経済(個々の市場と企業):消費者と企業がどう行動し、価格と取引量がどう決まるのか、市場の失敗はなぜ起きるのか
- マクロ経済(国全体の経済):GDPの測り方、景気循環・物価・失業、IS-LM分析やAD-AS分析で経済全体の動きを考える
- 金融・財政と国際経済:マネーと金融政策・財政政策の効果、貿易の利益、国際収支や為替レートの決まり方
市場と経済の分析の基本情報
| 試験科目 | 1次 科目Ⅲ「市場と経済の分析・数量分析と確率・統計・職業倫理・行為基準」 |
|---|---|
| 試験での出題 | 第3問「ミクロ経済」(15点)・第4問「マクロ経済」(23点)・第5問「金融と財政」(22点)(2025年春・2024年秋の本試験の構成) |
| 学習ポイント数 | 56項目(大分類8つ) |
| 2次とのつながり | 2次では景気循環、金融政策と財政政策、国際経済と為替をより応用的に扱い、さらに「産業政策と市場規制」「市場の分析・予測と経済的要因」など、経済の知識を市場分析に生かす内容を学びます |
全体像:8つの大分類
| 大分類 | ひとことで言うと |
|---|---|
| (1) 市場メカニズムと企業行動 | ミクロ経済の基本。需要と供給、消費者と企業の最適な行動、完全競争・独占・寡占の違いを学ぶ |
| (2) 国民所得と金利や物価との関係 | AD-AS分析で、GDPと物価が短期・長期でどう決まるかを考える |
| (3) 国民経済計算の仕組み | GDPの測り方と中身、貯蓄・投資バランス、IS-LM分析など、マクロ経済の「ものさし」と基本モデル |
| (4) 景気循環と経済成長とその要因 | 物価指数・インフレ・景気循環・失業の関係を理解する |
| (5) 金融・資本市場とマネー | お金(マネー)の定義と量、貨幣の理論、金融機関と日本の金融構造 |
| (6) 金融政策と財政政策 | 中央銀行と政府が景気や物価にどう働きかけるのか、その効果と限界 |
| (7) 国際貿易と世界経済 | 比較優位にもとづく貿易の利益と、関税の影響 |
| (8) 国際資本移動と外国為替市場 | 国際収支と為替レートの関係、購買力平価や金利平価による為替の考え方 |
各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。
(1) 市場メカニズムと企業行動
ポイント:ミクロ経済学の中心です。消費者は効用を最大化し、企業は利潤を最大化するという前提から、需要曲線・供給曲線が生まれ、市場で価格と数量が決まる流れを学びます。完全競争・独占・寡占といった市場構造の違いや、市場がうまく働かない「市場の失敗」も押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 需要曲線と供給曲線 | 価格が下がると買いたい量が増え(右下がりの需要曲線)、価格が上がると売りたい量が増える(右上がりの供給曲線)という基本 |
| 価格メカニズムと均衡 | 需要と供給が一致する点で価格と取引量が決まり、超過需要なら価格が上がり、超過供給なら下がって均衡に向かうしくみ |
| 市場構造と競争 | 売り手の数や参入のしやすさによって、完全競争・独占・寡占など市場のタイプが分かれることを知る |
| 市場の機能と市場の失敗 | 市場は資源をうまく配分するが、不完全競争(独占など)・外部性・公共財・情報の非対称性の4つの場面ではうまく働かないことを理解する |
| 需要曲線と消費者行動 | 消費者は限られた予算(予算制約)の中で、自分の好み(選好)に合う組み合わせを選ぶ――そこから需要曲線が導かれる |
| 所得・価格の変化と需要、価格弾力性 | 所得や価格が変わると需要量がどう変わるか。需要の価格弾力性=需要量の変化率÷価格の変化率(絶対値)を計算する |
| 無差別曲線と効用最大化 | 同じ満足度になる組み合わせを結んだ無差別曲線と予算制約線が接する点が最適消費。限界代替率=価格比が条件になる |
| 供給曲線と生産・費用の関係 | 生産量と費用の関係(収穫逓増・逓減)、損益分岐点や操業停止点、規模の経済・不経済の意味を理解する |
| 完全競争の利潤最大化と供給弾力性 | 完全競争の企業は「価格=限界費用」となる量を生産すると利潤が最大になる。供給の価格弾力性の計算もできるようにする |
| 効率的な生産(費用最小化) | 一定の生産量を最も安く作る条件。労働と資本の技術的限界代替率が要素価格の比に等しくなる点を選ぶ |
| 消費者余剰・生産者余剰・社会的余剰 | 買い手と売り手が取引で得る「得した分」を面積で表し、その合計(社会的余剰)で市場の効率性を評価する |
| 市場構造の特徴と市場集中度 | 完全競争・寡占・独占の特徴、長期には参入・退出で超過利潤がゼロになること、ハーフィンダール指数など市場集中度の計算 |
| 独占企業の利潤最大化 | 独占企業は「限界収入=限界費用」となる量を選び、需要曲線から価格を決める。最適生産量・価格・独占利潤を計算する |
| 不完全競争市場の企業の競争 | 寡占企業どうしの駆け引き、製品差別化による独占的競争、価格戦略や広告などの非価格競争を理解する |
(2) 国民所得と金利や物価との関係
ポイント:経済全体の「需要(AD)」と「供給(AS)」の曲線を使って、GDPと物価がどう決まるのかを考えます。短期には需要の変動で景気が動き、長期には完全雇用の水準に落ち着く、という短期と長期の違いがポイントです。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| IS-LMからAD曲線を導く | 物価が下がると実質貨幣供給が増えて金利が下がり、GDPが増える――この関係から右下がりの総需要(AD)曲線を導く |
| 短期と長期のAS曲線 | 賃金や価格がすぐに調整されない短期のAS曲線は右上がり、長期には完全雇用GDPで垂直になるという考え方 |
| AD-AS曲線の変動要因と効果 | 財政・金融政策や原材料価格の変化などでAD・AS曲線がシフトすると、GDPと物価がどう動くか |
| 需要・供給の変動と景気循環 | 総需要や総供給のショックが、短期的に景気の拡大・後退や物価の上昇・下落をもたらすしくみ |
| 長期完全雇用と需給ギャップ | 経済の実力である潜在GDP(完全雇用GDP)と実際のGDPの差(需給ギャップ)の意味 |
| 労働市場と均衡GDP | 雇用や賃金の状況がGDPの水準にどう結びつくか。労働市場の均衡とGDPの関係を理解する |
(3) 国民経済計算の仕組み
ポイント:マクロ経済の「ものさし」であるGDPの測り方と、その中身の読み方を学びます。あわせて、財市場と貨幣市場の均衡からGDPと金利を同時に決めるIS-LM分析を使い、財政政策・金融政策の効果を考えます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 国民経済計算と三面等価 | GDPは生産・分配・支出のどの面から測っても等しくなる(三面等価)という国民経済計算の基本 |
| 名目GDP・実質GDP・デフレーター | 名目GDPは金額そのまま、実質GDPは物価変動を除いたもの。GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP |
| 貯蓄・投資バランス | 民間の貯蓄超過+財政収支=経常収支(ISバランス)の関係を理解し、統計の数値から計算する |
| 寄与度による成長要因の分析 | GDP成長率を消費・投資・政府支出・純輸出などの寄与度に分けて、成長をけん引した項目を探る |
| 国際収支とGDP・GNI | GNI=GDP+海外からの所得の純受取、といった国際収支統計とGDP・GNIの関係と、経済活動が国際収支に表れるしくみ |
| 産業連関表 | 産業どうしのモノやサービスの取引を一覧にした表の読み方と、ある需要が他の産業にどう波及するかの分析 |
| 財市場の総需要と総生産 | 消費・投資・政府支出などの総需要に見合うように総生産(GDP)が決まる考え方と乗数効果 |
| 貨幣需要と金利の決定 | 取引のためや資産として持ちたい貨幣の量(貨幣需要)と貨幣供給が一致するところで金利が決まる |
| IS-LM分析と政策効果 | 財市場の均衡(IS曲線)と貨幣市場の均衡(LM曲線)の交点でGDPと金利が決まる。財政支出増や金融緩和で曲線がどう動くかを図で説明する |
(4) 景気循環と経済成長とその要因
ポイント:物価・インフレ・景気・失業という、ニュースでもおなじみのテーマを経済学の言葉で整理します。物価指数の種類、インフレと失業の関係(フィリップス曲線)、景気循環の測り方と理論が中心です。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 主要な物価指数 | 消費者物価指数(CPI)・企業物価指数・GDPデフレーターなど、物価を測る指標の違いと特徴 |
| インフレ率とフィリップス曲線 | 失業率が低いほどインフレ率が高くなりやすいという関係と、期待インフレ率を入れた考え方 |
| インフレ・デフレの社会的コスト | 物価の上昇・下落が、実質的な富の移転や価格改定のコスト、経済活動の停滞などを通じて社会にもたらす負担 |
| 景気循環と景気指標 | 景気の拡張・後退の局面と、景気動向指数(先行・一致・遅行)など景気を測る指標 |
| 景気循環の主要な理論 | 在庫循環や設備投資循環など周期の異なる循環や、景気変動がなぜ起きるのかを説明する代表的な理論 |
| 景気循環と失業率 | 景気が悪化すると失業率が上がるという関係(オークンの法則など)と、失業の種類 |
(5) 金融・資本市場とマネー
ポイント:「お金(マネー)」とは何で、どれだけ世の中に出回っているのかを学びます。マネーストックとマネタリーベースの関係、貨幣数量説やフィッシャー方程式、金融機関の役割と日本の金融構造を押さえます。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| マネーと通貨指標の定義 | 現金・預金などのうち何を「マネー」と数えるか。M1・M2・M3など通貨指標の範囲の違い |
| マネーストックとマネタリーベース | 中央銀行が供給するマネタリーベースと、世の中に出回るマネーストックの関係(信用乗数) |
| 貨幣の理論とフィッシャー方程式 | 人がお金を持つ理由(貨幣需要)や貨幣数量説(MV=PY)、名目金利≒実質金利+期待インフレ率(フィッシャー方程式)の計算 |
| 金融取引と金融機関の役割 | 直接金融と間接金融の違いや、銀行などの金融機関が資金の仲介・決済などで果たす役割 |
| 日本の金融構造と短期金融市場 | 資金循環統計から見た家計・企業・政府などのお金の流れと、コール市場など日本の短期金融市場の特徴 |
(6) 金融政策と財政政策
ポイント:中央銀行による金融政策と、政府による財政政策が、景気や物価にどう働きかけるのかを学びます。それぞれの手段・効果が伝わる経路・限界を比べて理解し、財政支出乗数の計算もできるようにします。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 中央銀行の組織と役割 | 日本銀行などの中央銀行の目的・役割(物価の安定、金融システムの安定など)と、政府との関係(独立性) |
| 金融政策の目標と手段 | 物価の安定などの目標と、政策金利の操作・公開市場操作などの手段、政策運営のしかた |
| 金融政策と財政政策の違い | 誰が行うか、どんな手段で、どんな経路で経済に効くのかという2つの政策の違い |
| 金融政策の効果と波及経路 | 金利・資産価格・為替・貸出などを通じて効果が伝わる経路と、金利がゼロに近いときなどの限界 |
| 財政政策の役割と目的 | 資源配分・所得再分配・経済安定化という財政の3つの役割 |
| 財政政策の効果・限界と乗数 | 政府支出を増やすとGDPが何倍に増えるか(財政支出乗数)の計算と、クラウディング・アウトなどの限界 |
(7) 国際貿易と世界経済
ポイント:国どうしが貿易をすると、なぜお互いに得をするのかを学びます。キーワードは「比較優位」です。あわせて、関税をかけると誰が得をして誰が損をするのかを余剰の考え方で整理します。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 比較優位と絶対優位 | 何でも効率よく作れる国(絶対優位)でも、機会費用が相対的に小さいもの(比較優位)に特化すると全体が得をする |
| 比較優位を生む要因 | 技術の違いや、労働・資本など生産要素の豊富さの違いが比較優位を生むという考え方 |
| 貿易の利益 | 各国が比較優位のある財に特化して交換すると、消費できる量が増えるなど貿易によって得られる利益 |
| 関税政策の影響 | 関税で国内価格が上がると、国内の生産者は得をし消費者は損をし、全体では余剰が失われる(死荷重) |
(8) 国際資本移動と外国為替市場
ポイント:国境を越えたお金の流れと為替レートの決まり方を学びます。国際収支統計の読み方、さまざまな為替レートの種類、購買力平価や金利平価といった為替の理論が中心で、金利平価は計算問題として出やすいところです。
| 学習ポイント | 学ぶ内容 |
|---|---|
| 国際収支統計の分析 | 経常収支・資本移転等収支・金融収支の構成と、それぞれの項目が表す取引を読み解く |
| 国際収支と為替レート | 貿易や資本の流れが外貨の需要・供給を通じて為替レートにどう影響するか |
| さまざまな為替レート | 名目と実質(物価調整後)、2国間と実効(複数通貨の加重平均)、直物(いま)と先渡(将来)の為替レートの違い |
| 為替相場制度と外国為替市場 | 固定相場制と変動相場制などの制度の違いと、外国為替市場のしくみ |
| 購買力平価 | 同じモノは各国で同じ値段になるはずという考えから、物価の差で為替レートを説明する理論 |
| UIPとCIPの計算 | 2国の金利差と為替の関係。先渡レートを使うカバー付き金利平価(CIP)と、予想為替レートを使うカバーなし金利平価(UIP)を計算する |
市場と経済の分析を学ぶときのコツ
1. グラフは自分の手で描いて動かす
需要・供給曲線、無差別曲線、IS-LM曲線、AD-AS曲線など、この分野はグラフで考える場面がたくさんあります。「政府支出が増えたらどの曲線がどちらにシフトするか」を自分で描いて確かめると、暗記に頼らず理解できます。
2. ミクロとマクロを分けて整理する
(1)は個々の消費者・企業・市場を扱うミクロ経済、(2)以降は国全体を扱うマクロ経済と、国際経済・金融の話です。いま学んでいるのがどちらの視点なのかを意識すると、用語の混乱を防げます。
3. 計算は公式の意味とセットで覚える
価格弾力性、独占企業の最適生産量、GDPデフレーター、財政支出乗数、金利平価などは計算問題になりやすいところです。テキストの例題を解きながら、式が何を表しているのかを言葉で説明できるようにしておきましょう。
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。
よくある質問
Q. 経済学をまったく学んだことがなくても大丈夫ですか?
大丈夫です。大分類(1)の需要と供給から順に積み上げていく構成なので、初めての方でも基礎から理解できます。グラフの読み方に慣れることが最初の目標です。
Q. 試験ではどのように出題されますか?
2025年春・2024年秋の本試験では、科目Ⅲの第3問(ミクロ経済)・第4問(マクロ経済)・第5問(金融と財政)として出題されました。出題の形は回によって変わる可能性があるので、学習ポイント全体をまんべんなく押さえておきましょう。
Q. 学習ポイントとは何ですか?
日本証券アナリスト協会が「CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」として公表している、学習内容の一覧です。出題範囲の公式な目安になるので、テキストを読むときはどの学習ポイントを学んでいるのかを意識しましょう。
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